スーパーで、真っ赤なトマトを買った。
見た目は、おいしそうです。
切って、ひと口食べてみる。
……あれ。
思っていたより、静かです。
赤いのに、香りが弱い。
甘さも、旨みも、想像していたほど広がらない。
そんな経験はありませんか。
その理由は、トマトが赤くなった場所にあるかもしれません。
石川県白山市で、小さなトマト農園「ぶるベジ」を営んでいる中川です。
今日は、スーパーのトマトが「なんとなく物足りない」と感じる理由と、ぼくたちが日持ちしないトマトを作る理由をお話しします。
先に結論を言います。
ぶるベジのトマトは、日持ちしません。
商品紹介の一行目としては、だいぶ不安です。(笑)
でも、この日持ちの短さには、理由があります。
真っ赤なトマトが、青いうちに収穫される理由
ぼくは就農以来、地域のJAのトマト部会に所属し、共同出荷も続けてきました。
市場へ届けるトマトに必要なのは、おいしさだけではありません。
輸送中に割れないこと。
店頭まで硬さを保つこと。
安定して棚に並べられること。
多くの人へ、同じ品質で届けられること。
どれも、日本の食卓を支えるために欠かせない力です。
そのため、市場向けのトマトは、青みが残るうちに収穫します。
夜の気温が高くなる時期には、「青リンゴですか」と思うほど青い状態で穫ることもあります。
初めて見る人は、だいたい二度見します。
大丈夫です。
ぼくも最初は二度見しました。
これは手抜きではありません。
硬いうちに穫れば、輸送中に割れにくくなります。
お店へ着く頃には赤くなり、売り場に並べられる状態になります。
全国へ安定して届けるための、よくできた仕組みです。
赤くなることと、味が乗ることは違う
青いうちに収穫したトマトも、置いておけば赤くなります。
やがて柔らかくもなります。
いわゆる追熟です。
ただ、トマトの糖度は、収穫した時点でほぼ決まるといわれています。
バナナのように、収穫後にたくわえたデンプンを糖へ変え、どんどん甘くなる果物とは仕組みが違います。
赤くはなる。
柔らかくもなる。
でも、甘さや旨みが後から大きく増えるわけではありません。
樹の上で熟す最後の時間には、色だけではなく、香りや旨みも深まっていきます。
つまり、あの「なんとなく物足りない」は、舌がぜいたくになったからでも、農家がさぼったからでもありません。
味が乗りきる前に、長い旅へ出たのかもしれません。
ぼくたちが、収穫を待つ理由
直接お届けするぶるベジのトマトは、樹の上で赤くなるまで待ちます。
ぼくたちは、この収穫方法を「赤熟もぎ」と呼んでいます。
名前は格好いいです。
現場は、わりと必死です。
赤くなるまで待つと、雨や湿度の影響で割れやすくなります。
収穫のタイミングも、かなりシビアです。
「明日の朝でも大丈夫だろう」と思って帰る。
そして翌朝、ハウスに入った瞬間に「あ゛ーっ」と声が出る。
そんなこともあります。
昨日まできれいだったトマトが、一晩で割れていることがあるからです。
それでも待つのは、食べた瞬間の深さが変わるからです。
包丁を入れたときに、青っぽさではなく、熟したトマトの香りが立つ。
口に入れると、甘さだけではなく、酸味と旨みが広がる。
飲み込んだあとにも、トマトらしい余韻が残る。
塩を振らなくても、もう一切れ食べたくなる。
ぼくたちが届けたいのは、そんなトマトです。
以前、お客さんから、こんな言葉をいただきました。
「届いたのは、BESTな状態のトマトでした」
「食べた瞬間、なぜかガッツポーズしました」
ガッツポーズ。
トマトを作っていて、なかなか出会えない褒め言葉です。
ぼくも画面の前で、小さくガッツポーズしました。
日持ちしないのは、本当に欠点です
ここは格好よく言い換えません。
日持ちしないのは、買う方にとって不便です。
届いたら、できるだけ早く食べてください。
冷やしすぎると香りを感じにくくなるため、食べる少し前に冷蔵庫へ入れるのがおすすめです。
すぐに食べきれない分は、加熱料理やトマトソースにも使えます。
完熟だから価値がある。
同時に、完熟だから待ってくれません。
こちらの予定表を少しは尊重してほしいところですが、トマトには聞く耳がありません。(笑)
ただ、その代わり、箱を開けた瞬間から食べ頃です。
数日置いて赤くなるのを待つ必要はありません。
届いたその日から、食卓の主役にできます。
スーパーに並べにくい状態を届けたい
硬くて日持ちし、一年を通して多くの場所で買えるトマト。
その大切な仕事は、大きな産地や先輩農家のみなさんが担ってくれています。
ぶるベジが届けたいのは、その反対側にあるトマトです。
長い流通には乗せにくい。
棚には並べにくい。
でも、樹の上で待ったぶん、届いたらすぐに食べてほしい。
ぼくたちが言う「旅をさせない」は、遠くへ送らないという意味ではありません。
味が乗る前に収穫し、長い時間を流通に使わせないという意味です。
農園から食卓へ、できるだけ寄り道を少なくする。
トマトがいちばん良い顔をしているうちに届ける。
日持ちはしません。
でも、記憶には少し長く残る。
そんなトマトを目指しています。
ぶるベジのトマトは、箱を開けた日から食べ頃です。
樹の上で赤くなるまで待った「赤熟もぎ」の味を、一度、食卓で比べてみてください。
ぶるベジの「赤熟もぎ」トマトはこちらです。
購入を迷っている方は、先に食べてくださった方の声もご覧ください。
https://www.tabechoku.com/producers/3077842/posts/reviews
畑で起きていることや、おいしいトマトの見分け方、届いてからの食べ方も、これから書いていきます。
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食卓に、拍手を。
ぶるベジ


